実際に保険を使ったことがある方に、
そのときのエピソードや状況など、話を聞いてきました。
Interview05 保険の見直しでさらに保障を充実させることができたかもしれません
Profile
西田美穂さん(仮名)(?歳)
若くして夫が「悪性リンパ腫」という血液のがんを発症。
加入していた保険のおかげで、治療の選択肢が増えました。
ご本人が病気に気付いたきっかけは?
今思えば風邪をずっとひいていて、薬が手離せない状況が半年くらい続いていました。そんな中、喉の痛みと腫れがひどくなり、「病院で診てもらおう」と話していた矢先に、高熱が出て全身が筋肉痛になってしまったんです。翌日にはペンも持てないくらいの痛みとなり、すぐに病院に行きました。
最初は個人病院に行ったのですが、重い病気の可能性があるということで、大きな病院を紹介されました。紹介された病院では、腫れを抑えるために「抗炎症剤」を飲むなど、さまざまな治療を行いました。しかし、2、3ヵ月経っても症状は回復せず、どんどん腫れはひどくなり、水も飲めない状態になってしまったので、切除することになりました。お医者さんも「炎症の成れの果てだから、取ってしまえば問題なくなる人も多い」と言っていましたが、夫の場合はそうではなかったんですよね。
告知はどのようにされたのでしょうか?
喉の腫れの切除後、夫がひとりで病院に行ったときに、「悪性リンパ腫」という血液のがんと告知されました。「がんと言っても落胆しないでください。今はいろいろな治療方法がありますので」と淡々と言われたそうです。ドラマだと「家族の人を呼んでください」なんて話になりますが、そんなことはありませんでしたね。夫は病院から帰ってきてから、「先生は鬼かと思った」って言ってましたよ。
私が夫から悪性リンパ腫と聞いたときは、初めて聞いた病名でしたし、とにかくびっくりしました。そのときは子供がまだ2歳半と小さかったので、「この子の将来はどうなるのか」という思いが強かったです。あとは、やはりお金のことも気になりましたね。
告知を受けたあと、すぐに入院されたのですか?
それが「抗がん剤の治療を始めますが、ベッドが空いたら連絡します」と言われてびっくりしました。しかも、連絡が来たのは3週間後だったんです。夫の悪性リンパ腫は進行が遅く、年単位で進行していくタイプだったので、3週間後でも大丈夫だったそうです。
実は、悪性リンパ腫には、抗がん剤がよく効く「ホジキンリンパ腫」と、効きにくい「非ホジキンリンパ腫」があるそうです。夫は非ホジキンリンパ腫のほうで、治るのは10人中4人と言われています。しかもその4人は、「寛解(かんかい)」(※)という状態で、「完治」とは言わないんです。あくまでも症状が治まっている状態なんですね。
※病気の症状がほとんどなくなったものの完治したわけではなく、様子を見ていく状態のこと。
抗がん剤治療はどのように行われるのですか?
血液のがんは切ることができないので、がん細胞を抗がん剤で消さなくてはいけません。抗がん剤治療は、消しても消しても発生するがん細胞を死滅させるために、繰り返し抗がん剤を投与していきます。その際に、いっしょに正常な細胞にもダメージを与えてしまうので、体への負担が大きいんです。
がん細胞が発生するサイクルは人によって違うそうですが、そのサイクルを見極めるために、まずは入院することになります。夫の場合、抗がん剤投与から4週後に、再度がん細胞が出てくることがわかったので、4週間に1度通院して抗がん剤を打つことになりました。
通院治療は、朝、病院に行って検査をして、10時から16時くらいまで点滴をします。大部屋で10人くらいの患者が一斉に点滴を受けているのですが、中には吐いたりする人もいるようです。
現在、お仕事のほうは?
入院中の1ヵ月間と退院後の1ヵ月間は会社を休みましたが、その後、仕事に復帰しました。元々は営業職でしたが、復帰後は体に無理のない事務職に異動となりました。抗がん剤を打つと1週間から10日間くらい具合が悪くなるので、そういうときは会社を休んだり自宅に戻って休憩しています。住んでいる社宅は会社の上にあるので、行き来が楽なのは良かったですね。
その後、抗がん剤治療が落ち着いてきて、髪の毛が生えてきたあたりに、営業職に戻りました。社歴は長かったので、ある程度融通の利いた部分もあったのかと思います。
抗がん剤による副作用は?
当初は、吐き気や脱毛、イライラするといったような副作用がありました。また、免疫が落ちるので、風邪をひきやすくなりしましたね。しかし、治療から8ヵ月が経ったころに認可された新しい抗がん剤は、副作用が少なく、投与のペースを月1回から週1回にできるので、再発率を抑えられるとのことでした。
ただし、1回15,000円くらいだった抗がん剤治療が、新しい抗がん剤にすると15万円くらいになると言われたんです。また、新しい抗がん剤は、最低6、7回は受けないと効果がなく、合計100万円近くになってしまいますが、切り替えることにして検査入院をしました。入院初日は、1日30,000円の無菌室のような個室で抗がん剤を打ったのですが、副作用がなかったので「本当に効いてるのかな」って言ってましたね。食欲もあり、「たこ焼き買ってきて」とも言ってましたよ(笑)。個室に泊まったあとは大部屋に移り、2日間様子を見て退院しました。治療費は、3日間で30万円近くになりましたね。
高額療養費制度は利用されましたか?
高額療養費制度(※)は利用しませんでした。今は事前申請をすることで、窓口で自己負担分だけを支払うことができますが、当時は全額窓口で支払い、2、3ヵ月後に給与といっしょに振り込まれるという流れだったんです。それが、いつになっても振り込まれず、おかしいなと思っていたら、夫が健康保険組合に申請をしていなかったようなんです。申請の担当者が夫の知り合いだったようで、「知られたくないから嫌だ」と…。さらに、会社にも申請が必要なのですが、病状を知られることで転勤を命じられたら困ると心配し、申請をしなかったんです。
抗がん剤治療中は気分が落ち込み、当時の夫は何を言っても聞いてくれない状態だったので、「落ち着いたらもう一度話そう」と思っていましたが、請求期限の2年が過ぎてしまいました。「生命保険に入っているからいいか」と、諦めははつきましたけどね。
※医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度。
どのような保険に入っていましたか?
「三大疾病保障保険」に入っていました。当時は知識がなかったので、保険会社に「悪性リンパ腫は保険金出ますか?」と聞いたら「出ない」と言われたんです。よくよく調べたら、保険金が出ることがわかったので良かったですが…。ですから、15,000円から15万円の抗がん剤に切り替えるときも、治療費のことを気にせず選択できました。もし、経済的に余裕がなかったら、親や親戚にお金を借りてまで選択したかどうかはわかりませんね。
ちなみに、夫と同じ病室にいた方は、新しい抗がん剤を保険適用前から投与していて、1回50万円以上かかっていたそうです。その方も、生命保険に入っていたから選択できたと言ってました。
受け取った保険金額は?
まずは、一時金を1,000万円受け取りました。これで、子供が大学に入るまでは大丈夫だと思ったのを覚えています。夫が入っていた生命保険は、保険料が安い、保険期間が10年の定期型でしたので、保険金がもらえたのは運が良かったと思います。
この一時金を受け取ったことで、保険対象外の漢方薬を飲んだり、いい食材を使った食事に変えることができました。漢方薬は1ヵ月で約50,000円、1年半続けたので合計で90万円近くかかりましたね。ほかにもビール酵母や青汁などを試しました。
手術や入院などの給付金は出ましたか?
最初に行った喉の切除は、検査のための手術ということで、手術給付金の対象外でした。請求の際に保険会社に提出する診断書は1部7,000円かかるのですが、耳鼻咽喉科と血液内科に書いてもらって合計14,000円。それが対象外ということで無駄になってしまい、がっかりしましたね。なお、手術代は10万円くらいかかりました。
入院に関する保障は、5日以上から給付されるというものでした。喉の手術のときは、2、3日の入院で済みましたので給付対象外でしたが、血液内科に移ってからの入院は、1日5,000円の入院給付金が出ました。通院に関しては、1回3,000円出る特約に入っていました。しかし、1ヵ月に1回の通院だったので、あまり意味はなかったですね。通院特約は年に6~8,000円くらい保険料を支払っていたので、1ヵ月に3,000円出てもなぁ…というのが正直な感想です。通院は1年半くらい続けたのですが、特約を選択する際は、よく考えてみることが必要かもしれませんね。
がんになった際の保障は十分でしたか
病院までのタクシー代など、入院や通院に伴ってさまざまな費用が発生しますので、一時金は最低100万円は必要だと思います。私たちの場合、保障は十分でしたが、当時もっと保障の厚い保険が出始めていて、見直しをしたいと思っていたんです。忙しさと、まさか33歳で大きな病気になるとは思っていなかったこともあり、見直しはしませんでしたが…。そのときに、「保険見直し本舗」のような相談サービスがあったら、保険を見直して、さらに保障を充実させることができたかもしれません。
ひとつ後悔しているのは、「保険料払込免除特約」(※)をつけていなかったことです。この特約をつけていなかったので、いまでも保険料を払い続けています。保険は更新型ですので、保険料は今後上がっていく予定です。
※所定の身体障害状態や要介護状態、3大疾病になったときに、以後の保険料の払込みが免除される特約。
今後、新しい保険に加入する予定はありますか?
切除して治る胃がんや大腸がんなどの場合は、完治してから7年や10年経てば保険に入れるようですが、血液のがんの場合、加入できない保険がほとんどでした。ただし、がん特約や保険料払込免除特約をつけなければ、がんの既往歴に関する告知が必要ない終身保険や医療保険もあるようでした。
とはいえ、「5年以内に継続してお医者さんにかかっていましたか?」といった告知義務はありますので、加入できるようになった際は前向きに検討したいと思っています。下の子が成人するまでのことを考えると、十分な保障は確保しておきたいですよね。
現在、体調のほうは?
月に1度の通院から、徐々に3ヵ月に1度、半年に1度、1年に1度になり、治療から5年目くらいで、先生に「もう来なくて大丈夫」と言われました。しかし、本人的には心配だったみたいで、結局10年間通いました。ずっと同じ先生に診てもらっていたのですが、10年目で夫が転勤となり、本人的にも一区切りついたようです。
病気になると、人間ってどうしても落ち込んだりわがままになったりしますが、そこで家庭崩壊の直前くらいになったこともありました。新しい抗がん剤にしてからは、副作用もなくなり落ち着いてきましたが、お金がなかったらどうなっていたか…。お金があったからこそ、心に余裕が持てた部分もありますので、本当に保険に入っていて良かったと思います。