実際に保険を使ったことがある方に、
そのときのエピソードや状況など、話を聞いてきました。
Interview01 がんの治療には時間とお金がかかります
Profile
高橋真佐子さん(仮名)(57歳)
お子さん2人はすでに独立され、現在、夫婦二人暮らし。
共働きで生活をされていましたが、ある日がんと申告され、がん保険が役に立ちました。
がんだと気付いたきっかけは?
2011年の1月くらいから、たまにお腹に痛みを感じるようになりました。仕事が忙しく、しばらくしたら治るので、市販の薬でごまかして、すぐに病院には行かなかったんです。お腹の痛みは普通の腹痛と大差はなかったのですが、痛くなるのは夜中が多かったので、おかしいなとは思っていました。その後、お腹が痛くなる頻度が増え、4月に検査に行ったのですが、そこで大腸ポリープが見つかり手術をしました。
大腸ポリープの診察で最初にされた質問は「身内にがんの方はいますか?」でした。そこで「母と母の妹ががんでした」と答えたら、組織検査をしておきましょうということになり、がんが見つかったんです。
ご自身ががんだと知ったとき何を感じましたか?
余命申告はされなかったのですが、これで死んじゃうのかなって思いました。
そこで、がん専門の病院を紹介されたのですが、そのときはお見舞いに来てもらうのもいやでしたし、さくっと手術をしてすぐに退院できるかと思っていたので、少し遠めの病院を選んだんです。その病院の先生に初めて会ったとき、「手遅れにならなくて良かったね」と言われてひと安心したのを今でも覚えています。
がんの手術や治療はどのようにされたのですか?
がん専門の病院で詳しく検査をしたら、がんが肝臓に転移していることがわかったんです。がんは大腸から肝臓に転移しやすく、さらに肝臓からほかの臓器に転移しやすいそうです。そこで、まずは肝臓のほうのがんを小さくするため、抗がん剤治療をすることになりました。今、手術で取っても、すぐに転移してしまうからという判断です。その説明を聞いたときに、「治療費はどのくらいかかるんですか?」って聞いたら、1回15万~20万円くらいと言われて、正直「えーー!」って思いました。
今は高額療養費制度が改正(※)されたからいいのですが、以前は3割負担の治療費をすべて立て替えていたので、4ヵ月で120万円くらい支払っていました。私の場合、がんと診断されたときに、がん保険で給付された200万円でなんとか回していました。
抗がん剤治療は、今は基本的に通院で行うそうですが、入院を想像していたので、その点も驚きましたね。今、自分が一番伝えたいことは、がんの治療には時間とお金がかかるということです。
※2012年3月までは、まずは医療費の3割負担分を病院に支払い、数ヵ月後に高額療養費制度適用分の還付を受けることができました(70歳未満の場合)。2012年4月以降に関しては、「健康保険限度額適用認定証」を提示することで、病院への支払いが高額療養費制度の自己負担限度額までとなり、一時的に必要となる医療費が減少しました。
抗がん剤治療について詳しく教えてください。
最初に抗がん剤治療をしたのは、2011年の6月くらいです。最初の点滴は午後からずっとベットに寝たままで、約7時間もかかりました。7時間もかかるなら、普通は入院させますよね(笑)。終わったら「何かあったら電話してね」って感じで、そのまま帰るんです。通院になるとわかっていたら、もっと近い病院を選んでいたかもしれません。今も自宅から片道25キロの距離を、車で通院しています。
がん保険で通院の保障は?
通院の際のガソリン代は、がん保険の通院保障からまかなっています。1回通院すると5,000円が出たと思います。がんになったら、やはりいろいろお金がかかりますので、抗がん剤治療の特約と通院の保障は必要だなと思いました。
通院給付金の請求は、私の場合、年末にまとめて行っています。資料等は病院側で作ってくれるので、領収書などは必要なく、手続きは非常に簡単でした。
通院はどのくらいのペースでされているのですか?
当初半年くらいは週1のペースで通院していましたが、今は月2回通院しています。CTで経過を見ながら治療をしていますが、今は最初に比べて、腫瘍の大きさが5分の1くらいになっています。
先生には、あと3年は大丈夫って言われていますが、がんは治療を続けていくと耐性ができて、同じ薬では効かなくなるらしいんです。ですから、今はいつ完治するのか言えないそうなんです。薬はこれまで何回か替えていますが、そのうち使える薬がなくなってきたらアウトなのかもしれません。
がんになって、お仕事のほうは?
がんと告知されて休職をしていましたが、2013年の4月から復帰しています。がん患者の約3割は鬱と言われていますが、やはり副作用がつらくて、働けなくなっちゃうんですよね。子供も独立していますし、本当は仕事をしなくてもいいかなとは思いましたが、働いていれば気が紛れる部分もありますので。仕事をしないでいると自分で自分を追い詰めちゃうというか…、生きている意味を考えちゃうんですよね。
抗がん剤の治療中に、同じ部屋に20代・30代のがん患者さんがいるのを見て「私も働かなきゃ!仕事を通じて自分を現状を伝えていかなくてはいけない」と強く思ったのも復帰した理由のひとつです。
現在、体調のほうは?
2012年の1月ごろ、抗がん剤治療でとてもつらく、食欲もなくって、もうだめだなって思っていたんです。人と話すのもいやでしたし、ずっと家にこもっていました。いつ死んでもいいように、いろいろな物を片付けていましたし…。学生時代の友達には年賀状を出さないでねって伝えていました。
そのとき、知り合いに「免疫治療」がいいよってすすめられたんです。自分の血を少し取って、培養した免疫を入れた血液を自分の体に戻すのですが、この治療を始めてからは、ご飯も食べられるようになり、鬱な気分もなくなりました。夫も、家で化粧もせずにパジャマでうろついている私を見るよりも、こうやって元気な状態でいるほうが絶対にいいじゃないですか。周りの人にとっても、免疫治療をして良かったなって思います。
ちなみに、私が通院している病院では、免疫治療は1回23万円で、12回がセットになっていて合計300万円近くになります。免疫治療は自由診療ですから、健康保険は使えません。
高額な自由診療の治療費は、どうやって用意されたのですか?
実は、母の場合は70歳を過ぎてからがんになったので、医療費は1割負担で月60,000円くらい。その印象があったので、がんはお金がかからないって思っていたんです。しかし、自由診療の「免疫治療」が、ネットで調べてお金がかかることを知り、先生に相談したんです。まだ元気ですが、余命半年の宣告はもらえないですよねって。そしたら「できますよ」って言われて、ちょっとびっくりしました。抗がん剤はいつ効かなくなるかわからず、半年後はどうなるかわからないからというのが理由ですが、そんなことは先生に聞かないとわからないですし、たまたま聞いたから良かったんだと思います。それで、リビングニーズ特約(※)をつけていた収入保障保険から保険金をもらったんです。この収入保障保険は、50歳から70歳まで月々10万円ずつ給付されるというものでしたが、リビングニーズ特約により一括で1,500万円が給付されました。がん保険だけだったら、免疫治療はお金が足りなくてできなかったでしょうね。
ですから、今は女性の友達に収入保障保険をすすめています。お金の面で心配しなくていいというのが、保険の最大のメリットだと思います。
※医師から余命6ヵ月以内と診断された場合、契約している生命保険の保険金を生前に受け取ることができる特約。
加入されてるがん保険についてお聞かせください。
がん保険には3つ入っていました。一時金はそれぞれ100万円、100万円、50万円です。50万円のがん保険は、1日でも入院しないともらえないタイプでしたので、合計200万円が給付されました。昔はがんになったら通院で治療はできなく、ほとんどの場合入院していたようなので、そういった保険もあったのでしょうね。このがん保険は最近まで売られていたものなのですが、保険は医療の進歩に追いつけずに、あとからついていっているんだと思います。ですから、定期的に保険の見直しは必要だなって感じました。新しい保障が出てきたら、やはりつけたほうが安心な部分はありますし。
なお、給付金は保険会社に電話をすると書類が送られてきまして、記入をして戻すと3日くらいで振り込まれました。
がん保険に3つも入っていた理由は?
最初のがん保険は30歳のころに入ったのですが、当時はあまり深く考えなかったですね。がん家系だったということも、多少理由としてはあったのかもしれませんが、単純に解約返戻金がもらえるからいいなと思ったんです。
そのあとは、いいがん保険が出る度に加入していました。加入の際に、古いがん保険は解約しようと思っていたのですが、忙しくて解約できなかっただけなんです。
よくがんの方のブログを読むのですが、がん保険にがっつり入っていたという人があまりいないんですよね。その点、私は良かったのかもしれません。
がんを気にされている方に、どのような保険に入ったほうがいいと思いますか?
がんで入院をするケースは少ないと思いますので、がん保険は一時金がたくさん出るものがいいでしょうね。
ほかに医療保険に2つ入っていますが、私の場合、がんになったときに入院をしなかったので、医療保険から給付金は出ませんでした。大腸ポリープの手術のときは、医療保険から給付金が出ましたが、医療保険にしか入っていない場合、がんになったらたいへんでしょうね。通院だけでは給付金はもらえませんし。
今、自分が保険のお世話になって感じていることは、いざというときに自分と家族が困らないように、最悪の事態を考えておかなければいけないということです。そう考えると、やっぱり保険は必要だなと思いますね。自分の場合は保険に入っていて、本当に良かったと思っています。