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その道のプロに聞く
保険業界に少なからず関連している業界のプロに、その業界だからこそ見えてくる貴重な話を伺ってきました。
元会社員の薬剤師。漢方薬や健康食品などをメインとした相談薬局を目指す。6歳のお子さんの父親でもある。
「病気」を診るのではなく「その人」を診る
- こちらの薬局はいつからあるのですか?
- 高橋信泰(以下、高橋)富士薬局は49年前に薬剤師だった父が開いたのですが、父が亡くなり、後を継ぐことになりました。実は私は、6年前までサラリーマンをしていたんです。
- 昔からいつかは薬剤師になろうと考えていたのですか?
- 高橋いずれは実家の薬局を継ぐつもりでしたので、東京理科大学の薬学部に入りましたが、大学院ではがん細胞の遺伝子などを扱う研究をしていました。修士課程修了後は、製薬メーカーに入社し、4年間勤務させていただきました。漢方はいずれ薬剤師としての武器になると思い、当時から漢方の研修会などによく参加していました。
製薬メーカー退職後は、漢方薬の処方箋を扱う機会が多い「調剤薬局」に勤務し、その一方で、中医学を学べる大学に3年間通い、国際中医専門員の認定をもらいました。33歳のときに「相談薬局」を開局しましたが、父の容態も悪くなり、38歳のときに実家の薬局を継ぎました。 - なぜ漢方が武器になると思ったのですか?
- 高橋私は父の影響もあって、調剤薬局ではなく、地域密着の相談薬局をやりたいと思っていたんです。
「医薬分業」(※)や規制緩和により、かつては栄養ドリンクですら薬局でなければ買えませんでしたが、今ではコンビニやインターネットで薬が買える時代になりました。結果、町の相談薬局のほとんどが調剤薬局やドラックストアに変わりました。昔は病気になれば薬局へ相談に来てくれましたが、相談薬局がない今は自分で調べるか病院に行くしかありません。ですが、自分で調べるにもネットの情報は危ういですし、病院に行くにしてもなかなか腰を据えて話をすることができません。ですから、地域の健康の窓口として気軽に悩みを話せる相談薬局は、今後、見直されていくと思います。
相談薬局において、なぜ漢方が好まれるかというと、漢方の考え方が相談薬局のスタイルに合うからです。現代の医療は、何でも基準値を決めて、そのラインから外れたら病名がつき、決まった薬を出しています。例えば、ある症状に対して60%の有効率の薬があったとします。60%の人を良くできれば優れた薬だと言えますが、残り40%の人は救われません。漢方では、同じ症状を訴えている人でも、その人の持つ体質によって、その人に合った漢方があるはずと考えます。
このように漢方の考え方は、その人の症状、体質を聞き、一人ひとりの不調や悩みに向き合っていきましょうというものなので、相談薬局というスタイルに合うんです。そもそも医療とは、そういうものだと思います。
※医師が診察して処方箋を出し、薬剤師は薬の処方と説明に専念するしくみのこと。医薬分業によって、薬剤師の意義や価値が出てきた一方で、処方箋どおりに調剤するだけになりがちです。 - 漢方はどんな人におすすめですか?
- 高橋アトピーの人や体質改善をしたい人、内臓脂肪が気になる人、家系的に病気が心配な人、同じ病気で長年通院している人などに、漢方は力になれると思います。漢方は、あくまでも身体に症状が出てきた場合に飲むものなので、基本的には普段から飲む必要はありません。
大事なのは来てくれた人の体調が良くなることですから、病院に行ったほうがいいときはそうすすめます。病院に行って改善できない場合の、次の手段として漢方を考えていただいても構いません。 - 例えば、病院では治らなかったけど、漢方で改善できた例などありますか?
- 高橋吹き出物がひどく、あごのまわりが湿疹のように赤くなっていた若い男性なんですが、結婚式までになんとかきれいにしたいという相談で来られました。そこで、血液の循環を良くしつつ、解毒作用のある漢方を飲んでいただいたところ、1週間ほどで効果が出始めました。最終的には2~3ヵ月ですっかり良くなって、たいへん喜んでもらえました。
若い女性の肌荒れやニキビの悩みは多いですね。ほかにも、慢性的な蓄膿症や顔面神経痛、アトピーの症状改善、不妊の方がお子様を授かることができたなど、漢方では珍しいことではありません。